こんにちは。ホネ山です。
今回は名村大成堂様にインタビューに参りました!
夏のイベントで名村様ブースで筆をお試したときに社員の方とお話ししまして「是非!」ということになりまして
取材という形で訪問させていただきました。
今回はホネ山一人ではなく、枯葉庭園さん( @Karehateien )、まやさん( @maya_ma_ya__ )の3人で訪問することに。
3人とも違うパートを記事化するので、トータルで物凄いボリュームになります!
枯葉庭園さんの記事はこちら!実際の筆の作り方などとっても勉強になります!
まやさんの記事はこちら!こちらもものすごい製造見学の記事です。
まずはそびえる看板を撮影。
とても重みのあるロゴです。
会議室(筆が物凄い沢山ございました!)に通していただきインタビュー開始です!
■質問サイド
ホネ山(ブロガー)
枯葉庭園さん(作家・ブロガー)
まやさん(絵の具で遊ぶ人・ブロガー)
■回答サイド
すずきさん(職人・X中の人)
たかはしさん(Xチーム リーダー)
やのさん(営業・画像編集担当)
いしかわさん(康尖など新製品開発に携わる)
Q:筆職人さんは職人歴何年から何年ぐらいの方がいらっしゃいますか。
ホネ山:職人さんに関する質問ですね。
すずきさん:
自分が社内で一番若くて、今7年ぐらい。
一番のベテランが25年ですが、これでも筆職人の業界ではかなり若い方で。
自分が入社する前は、50年やってるとかざらだったようですが。
ホネ山:
何年ぐらいやると、1人前になれるんですか?
すずきさん:
製品として出せるレベルになるのは、割と早い。
自分の場合は、先輩のチェックはあったものの想像以上に早く担当品番を任されました。
ただ製品としての品質基準をクリアできたからといって一人前ではないと思っています。
製品の品質を保つために必要以上の時間をかけてしまうこともありますし、逆に生産量やスピードをベテランの人に合わせようとすると今度は、質に無理が来るとか。
そういう意味ではいまだに一人前じゃないと思います。
あとは知識面ですね。
特に近年、原毛面の問題(質や量の低下)があり対応しなければならないことが多いので。
そういう時に品番としてのクオリティを維持するための対応、配合や作り方の調整が必要になります。
「ここをこうしたら元の描き味に近づくんじゃないか」とか、そういう発想をできるようになるには長年の経験が必要ですね。
特に最近は原毛の質がころころ変わっているので、その対応力は昔以上に重要になっていると思います。
昔は「くくれば筆になった」なんて言っていた時代もあったみたいですが…。
自分以外の職人がそういったことができる人たちで、15年から25年やっているので、10年、15年は必要なのかなっていう感じがします。
ちなみに、いま私は7年目になります。
ホネ山:
ありがとうございます!かなり遠い道のりですね……!!
Q:一部の高額筆で、特定の職人さんしか作れないスペシャルな筆はありますか。職人の世界でも後継者問題などやはりあるのでしょうか?
ホネ山:
「これ作るの難しいんだよね」っていうような筆ってございますか。
いしかわさん:
希少筆ってそのパターンですね.
すずきさん:
希少筆もそうだったり、例えばSK-Mercury、先が特殊な形状のものは、成りたての職人さんだと作れないものだったり。
すずきさん:
あとはコリンスキーの高い筆とかだったら、熟練の職人さんが担当したり、そういうようなのもあったりしますかね。
ホネ山:
コリンスキーとかやっぱり高い筆になると、プレッシャーみたいなのがハードルが上がったりとかもありますか。
いしかわさん:
やっぱもう本当にちょっとした量で、もううん万円とか。「少しも無駄にできない」ようになっちゃってるんで。
いしかわさん:
後継者問題の方はね、先ほどお話したように弊社に関しては若い人材がおりますので、そこは安心しております。
いろんな筆の産地に行くと、60歳が若手と言われていたり、70代80代の方たちがいっぱいいるので。
Q:店頭にある当たりとそうでない筆の見分け方
ホネ山:
これ私の質問なんですけど、筆が(店頭のプラスティックケースに)たくさん入ってるじゃないですか。
10本、20本中に、その中に当たりとあまり当たりでないものっていうのがあるのかなと。
店頭に選ぶときに直感で「えいっ!」って選ぶので、何か見分け方みたいなのがあったら教えて欲しいです。
すずきさん:
糊固めされてる筆はほとんどわからないですね。
ただよっぽど個体差があるような品番は、その中で穂先が鋭めだなとか、太めだなとかいうのは、ある程度見た目から判別できると思います。
それと水彩絵描きさんだと馴染みがないと思いますが、繊維が太い豚毛筆の場合は毛質や穂首のつくりがある程度見た目から判別できます。ただ、水彩で使うような軟毛の筆だと、その辺は難しいですね。
枯葉さん:
「気になるな」っていうときに交換してもらうのって出来るんですか?
たまにそういう質問が(私に)入ってきます。
「メーカーさんか、店舗にお問い合わせください」と書いているんですけど、確かにどこまでが不良品なのかな、ちょっと難しいなって思うことありますよね。
すずきさん:
明らかに毛組みがおかしいという場合などはお取り替えさせてもらっているんですけど、
(特に天然毛のブレはコントロールしきれないところがあるので)微妙なときはご了承いただくことが多いですかね。
Q:以前買った筆が、すぐ毛が抜けて使えなくなったことがありました
ホネ山:
使い方が悪かったのか、その場合何に気をつけたらいいのか、それともメーカーさんにお聞きしていいものか迷いました。
毛が抜けて使えなくなったときってどうすればいいかを知りたいです。と。(募集した質問から)
初期不良みたいなのに当たっちゃったときにどうやってカバーしたらいいか?っていう質問だと思います。
すずきさん:
これは問合せでも特に多い質問なのですが、抜け方というのがどういう抜け方か。それによりますね。
ごそっと抜けるのか、それとも使い始めにパラパラ毛が抜けるのか、それとも結構使ってきて抜けるのか。
そういうのによって原因が異なるんですけど…質問者さんは「すぐ」と書いているので、前2つどちらかだと思います。
まず最初にガバッと相当抜ける場合は間違いなく不良で、接着がちゃんとされていなかった可能性があります。
これは販売店さんを通して対応する形になります。
次に1本1本パラパラと落ちてくるパターン。、特に羊毛の刷毛が多いと思うんですけど、それは「落ち毛」って言って。製造過程で接着されなかった短い毛が落ちてきます。
これは不良とまではいかないんですけど、どうしても起こりうることで、弊社ではなるべく防ぐよう処理しています。
例えば、「B印絵刷毛」だとカタログにもそこを明記してあって。
あとは、これはメーカー限らず、ペンキ用とか安い羊毛刷毛はこの比でないぐらいに落ちます。
そういうのはカタログに書いてあるように、手で払うか、最初に水通しすると治まります。
油絵とか特にそうですけど、画面に毛が入ってそのまま残っちゃうとか、そういうのを防ぎたい場合は、これで解決すると思います。
使ってる途中で抜けるとか。その場合はそのユーザーさんのケアがまずかった可能性があります。
最後に使っている途中で抜けてくるパターン。
そういったお問合せの場合は、ケア方法をこちらで聞くんですけど
その時にたまにあるのが濡れた状態で、穂首を上に向けて長時間置いて置いたり、そのまま乾かしたり…。
あとは、油彩用の細筆を筆洗器でグリグリしたりとかもよくないですね。
ホネ山:
あと「買ったときのキャップを使い続けている」とか聞きます。
すずきさん:
ありますね。
たかはしさん:
ケア方法を聞いてみた時、原因がキャップだった確率が高いです。(笑)
すずきさん:
それをツイートした時も(キャップの付け直しが根腐れにつながる趣旨)「初めて知った」っていうコメントもありました。
こういったケア情報に関しては何回も定期的にツイートしていこうかなと。
たかはしさん:
書道用品のメーカーさんでも、キャップについてのツイートをしていて。
学校で使っていて、「子供の筆からすごい臭いがする……!!」みたいなコメントがあって。
(筆のお手入れ方法について)「知らなかった!!」みたいなコメントがめちゃくちゃ寄せられてバズってたんですよね。
(キャップの話について)言っているつもりだったけど、知らない方がこんなにいるんだなと思って。
すずきさん:
洗ったばっかりの洋服をそのままタンスに入れるような感じですね。
毛抜けの原因になる根腐れの話では、穂先を上に向ける乾かし方もダメですね。
ホネ山
私も穂先を下にして、吊るすんですけれど、それ考えたのも名村さんのツイートだったなと。
Twitterの影響力って大きいなと。
穂先を下に向けて乾かすための器具ってないんですよ。専用の器具。
メーカーさんに作ってほしいです。
これがないんで、いろんな方が頭をひねって、下に乾かす仕組みを作っているような状態ですね。
すずきさん:
方法を発信してても、「そのための道具」で推奨できるものが今のところないというのは、どうにかしたいところではあります。
たかはしさん:
話を戻しますが、「毛が抜けちゃった、どうしよう」という場合には、購入された画材店さんに一度相談してみると、どういう状態なのかを見て対応を判断していただけると思います。
不良かもしれないので見て欲しいという場合には、画材店さんから弊社に連絡が入りますので。
画材店のスタッフさんはいろいろなメーカーさんの筆をご存知ですので、詳しい方が多いです。
Q:筆マンのプロフィールを教えて欲しい!
筆マンとは:X(Twitter)の名村大成堂アカウントに出てくる筆のキャラクターのことです。
「ナムラのうえん」という畑から生えてきます。
すずきさん:
まずいつ頃出来上がったキャラクターなのかと言いますと、ツイッターを開設したのが5年前ごろで。
そのときに最初に何か挨拶とか、筆情報を発信するにあたって、キャラクターが喋るアカウントにすると、普通に中の人が喋るよりはいいのかなと思って。
最初は造形や設定など深く考えずに描き始めました。
実際の姿はもう今と全然違うんですよ。
多分それが初登場です。
すずきさん:
「こういうのにしよう」とかもなく。ちょっと恥ずかしいな……。
ホネ山:
好きな食べ物とか何かありますかね?
すずきさん:
そういう筆らしいプロフィールは後付けで考えました。
手練りの絵の具が好物で。最初イメージしてたのは豚毛の丸筆。
名村といえば油彩っていうイメージもあったりとか。
あとは出荷するときに、豚毛ってすごく硬くて手に刺さったりするんですけど。なんか面白いかなっていうので、何となく豚毛のイメージしてると。
ホネ山:
硬かったんですね。
すずきさん:
動かしやすいキャラとして誰かに刺さったりとか(一同笑)、面白いですね。
描いてくうちになぜか、なんかちょっと変な広がりが。
ペインティングナイフが友達なのかライバルなんか……。
私としては、「描くため、描画のための道具でもあるライバル」っていうのが見たいなと思って。
すずきさん:
ちなみにグッズ化したことがあるのですが、これは早すぎました…
ホネ山:
どんなグッズですか?
すずきさん:
缶バッジとクリアファイルです。相当初期ですね。
多分これを(X(以下Twitter))始めてから1~2年ぐらいのまだフォロワーさんも少ない北海道画材ユーザーショー1回目の時です。
北海道、札幌の大丸藤井セントラルさんのスタッフの方が筆マンを気に入ってて。
「これグッズにしていいですか?」と。
いやいや、ファンがいるかどうかも分からないのに!と自分では思ったのですが
とりあえずやってみるということで、そのときに缶バッジとシールとクリアファイルが初登場。
まやさん:
今出たら取り合いになりそう。(笑)
枯葉さん:
イベント行ったときにメモ帳いただいて、それを持って帰ったら娘が凄く気に入っていて。
「(今日)行くの?筆マン?」って。(一同笑)
すずきさん:
本当はメモ帳とか、筆を買ってくれた人に(グッズを)お渡ししたいです。
そんなアイテムとして、地道に始めた方がいいんじゃないかなって。
ホネ山:
筆マン欲しくて買う人いるんじゃないですか?
私は欲しくて多分(筆)買います。
たかはしさん:
(オマケ目当てにしては、筆は)高いですよ(笑)
すずきさん:
Twitterだから、フォロワーさんみんな絵を描いてる人達だし、イラストレーターさんもいるし。怖い。(一同笑)
ちょっとしたディテールとかを見られているかもしれない。
ここの処理はイラストとしてどうなんだろう。シンプル系にしても、ここはしっかり描き込んだ方がいいんじゃないかと冷静に見られてそう……。
ホネ山:
そんな厳しいジャッジをしながら筆マンが生まれてるってことなんですね。
すずきさん:
Twitter上げてから、いや、こうしておけばよかった。と思うことがあります。
ホネ山:
見てる方としては、もう楽しくて!「筆が何してるか」に焦点が行ってるんで、あんまり筆のディティールを気にしたことがなかったですね。
すずきさん:
結構Twitter引用とかコメントで、筆マンがいるとコメントとか書いてくださる方もいるんで、それは単純に嬉しいです。
あまり筆の情報だけ発信してるのではない関わり方が出来て。筆マンがきっかけで古い情報も見てくれるようになる人もいると思います。
筆マンの存在は確かに助かってるというか。
最初に勢いでやったやつですけど、やっておいてよかったなと。
自分が元々、(名村大成堂の)ユーザーだったので、名村大成堂というと老舗で高価な筆も作っているイメージがあって。
馴染みやすさや、ユーザーの側にいる感じを強調するのに筆マンは活躍してくれていると思います。たまにポップすぎる時もありますけどね。
Q:筆によって漢字の名村、カタカナのナムラ、アルファベットのnamuraなど表記が異なっていますが、考えて付けられてるのでしたら内訳とか欲しいです
確かに手持ちの名村筆のコレクションを見ていると、漢字、カタカナ、英語と表記は様々です。
すずきさん:
ある程度ジャンルで「日本画の筆はアルファベット表記はしない」とか、「アルファベット表記は洋画筆」とか決まりはあると思うんですけど。
昔の筆の名づけ親とか、名前の紙ラベルのデザインをした人も、そこまで意識してなかったんじゃないかな。
ホネ山:
「分けられている」ってことじゃないんですね。
たかはしさん:
「名前さえ定着すれば」と考えたのかもしれません。そこまで表記に昔からきちんとした区分があるわけではないように思います。
ホネ山:
デザイン面とかで決めてるとかあるんですかね? 漢字の方がこの筆に合っているみたいな。
すずきさん:
それもあるかもしれないです。
珍しいものだと、「東京ナムラ」と刻印された茶軸イタチ面相。紙ラベルのものならありますが、これだけじゃないかと思います。
枯葉さん:
(表記が様々な原因について)細さとか。小さいのだと紙貼れないですよね。
まやさん:
「違うメーカーなのかな?」とか、「元は一緒だけどのれん分けした」みたいな感じなのかと予想していました。
いしかわさん:
そうですね。確かにちょっと紛らわしいというのもあるかもしれません。
「ナムラ賞の協賛をご依頼いただくことがあって協賛品を出すのですが、その時の表記は「ナムラ」ってカタカナなんですよ。
カタカナで「ナムラ」って書いて「賞」って漢字で書かれたハンコが作られていまして、いつもそれ押しているんですけど。
なんでカタカナの「ナムラ」なんだろう?と今でもちょっと謎だなっていう。
たかはしさん:
ユーザーさんがTwitterでうちをハッシュタグ付ける場合、「どの表記がいいですか?」って聞かれたことがあったんですけど、こっちもちょっと困っています。
「名村大成堂」にした方がいいのか、「名村」って呼び捨てしたほうがいいのか。名村さんっていうときもあって「どれ~??」って。
枯葉さん:
エゴサの時「大成堂」までついてると被りがなさそうですけど、「名村」だと被りますね。しかも漢字がなかなか出てこないですね。(名村大盛堂、名村大聖堂など)
たかはしさん:
社名でエゴサ難しい問題はありますね。
ホネ山:
ホネ山とかエゴサしやすいですね。しないんですけど(笑)。
すずきさん:
短くて独自性があると、被らないし、検索しやすそうですね。
昔は多分、そこまでブランド名が重要になるのが分からなかったっていうのがあるので、弊社のように創業者の名前だったりしますね。