こんにちは。ホネ山です。
今日はなんとあの画材メーカー、ホルベインさん(以下敬称略)に超マニアックなインタビューをすることになりましたので、そのレポートをお送りいたします!
※こちらはホネ山の持ち込み企画で、商品や金銭はいただいていないため、「PR記事ではない」扱いです。
インタビューをしてみたかった!!
前々から取材というか、インタビューをしてみたいなぁと思っていまして、独り言としてつぶやいたところ……。
なんと公式の方から返信がございまして、インタビューすることになりました!!
自分で考えた質問+ゆる~く募集した質問を沢山持っていきまして……。
3月下旬、ホルベインの東京営業所に突撃しました!!
ご回答くださったのはこちらのお二人です!
ホルベヒコさん
YouTubeの「絵具画材深夜便」で、マニアックな内容をぺらぺらと長尺で語る凄い方
一度喋り出すと勢いがすごかったです!
とりあえず画材ヲタクの方にはぜひチャンネル登録して欲しいです!
ホルベイン公式Twitterでは更新情報はつぶやかれていないようなので、新着を見るにはチャンネル登録しておいた方が絶対いいです!
つしまさん
GOLDENの日本代理店統括や、アヴァロン水彩紙やブラックリセーブル(筆)を世に出された凄い方
つしまさんも一度喋り出すと勢いがすごかったです!
と、二人の凄い方に囲まれながらインタビューが開始になりました……!!
本当にありがとうございました
ではインタビュー本編参りましょう!
うちはやっぱり画材会社だな~と思うのはどういう時ですか?
(回答:ホルベヒコさん)
これはですね、僕だけじゃなくていろんな人たちに聞いてみたんですけど。
まず最初出てきたのが、社内にさりげなく飾ってある絵ですね。はい。
実は社員が描いた絵がめちゃめちゃうまい!とかですね!
ちょっとお見せしますけど、例えばこれはバレンタイン?ホワイトデーかな。
みんなこうやってメモをつけて回すんですけどめっちゃクオリティが高いっていうとこで。
女性社員はやっぱり絵の上手い子が多くて。
これはキャンバスの性能テストしたときに「全く同じものを書いて」って違う子たちに描いてもらったんですよ。
この子たちは日本画出身の子なんですけど、やっぱり上手いみたいな。
これはつしまさんですね。
パステルでワークショップのときに描いたんですが、ちゃちゃって描いちゃう!みたいな。
やっぱりみんな社員がすごいですね~。
実はですね、絵を描ける人は少ないんですよ。絵の具会社って。
多分どの会社でもそうなんですけど、日本の絵具会社っていうのは、工業系、特に技術者は化学出身が多いんですよね。
それで、ホルベインの場合はですけど、もう何十年も前から絵画部みたいなものがありまして、新入社員のときは結構、もう半強制的に入ったりとかするんですけど。
でも今は、就社してくる時点で絵が上手い方が結構います。
ホワイトボードの落書きとか全然落書きじゃないレベルで上手い。
それから、SNSとかで誰かの作品を見たりすると、何の画材で描いているかっていうのがめちゃくちゃ気になるというか。
チラっと(画材が)映ると、”すごく使ってくれている”感がある。
あとたくさん色が並んでる商品!色鉛筆とか水彩とか見たときに、特にグラデーションが綺麗だったときにすごくテンションが上がるらしい。
あとですね、画材に対する値段の感覚がバグってる(笑)
一般的には高価格でも、「いや、これは正価でしょう!」と思っているところがあると。
それと、パっと見た色を色味とか色名を絡めて表現することが多い。
例えば商品に関係なくても、「紫がかった青だね」とか「オペラみたいなピンクだね」とか言うことが多いんで、普通にピンクとか青とは言わない。
あと、「ブリリアントピンク」とか「ターコイズブルー」とかしっかり言う人が多いと。
それから商品名が結構長いものが多いのでみんなすごい縮めるんですよね。
例えばオドレスペトロール(画用液)だったらオドペトとか。
水彩は弊社が”HWC”、エメラルドグリーンノーバはエメグリーンノーバとみんな縮めて言う。
新入社員は何かわかんないっていう感じで(笑)
腕鎮ってありますね。あれは短縮だと思ったらしいんすけど、元々腕鎮です。
中の人のお気に入りの混色の組み合わせを教えてください!
(回答:ホルベヒコさん)
これはですね、かなりマニアックだと思うんですけど、はい。おそらくですね皆さんが望んでいる色とはちょっと違うものを用意してみたんですけど。
例えばですね、みんな三原色っていうのはよく理解されてるというか、はい、こういう形ですよね。
(いつもの3原色を出される)
はい。
これ質問ですけど、赤と黄を足したら何になりますかね、オレンジですよね。当たり前ですね。
黄色と青が緑というのは、皆さん大体わかるんですよね。
青と赤だとちょっと紫っぽいだろうなとわかる、と。
ところがですね、緑と紫はなんですかど。
ホネ山「緑と紫を混ぜたら黒かな?」
(普段混色しているのになぜ黒と答えた?くすみ青でしょ……)
青です!でもこれわかる人ほとんどいないんで。
紫とオレンジだと……。
ホネ山「茶色ですね。」
これはですね……、あ、でも物によるな。これは赤っぽくなる。
で、最後オレンジと緑を混ぜるとこんな色になる(くすんだ黄色)。
実はですね、こういう組み合わせ、要はちょっと意識しにくい色っていうのは実はみんなに本当はやって欲しくって。
後ほどの質問の回答にもなるんですけど、セットで必ずオレンジと紫って余ることが多いんですよ!
でもあれ本当は微妙な色を出すためにちょっと入れてるんですよね!
ということでやってみましょう!ビリジャンとキナクリドンバイオレット(緑と紫)でどうなるかと。
(プルシャンブルーのような青が出来上がる)
本当はセットにある色でこういう色を作ってほしいね~みたいな。
次はブリリアントオレンジとキナクリドンバイオレット(オレンジと紫)いってみましょう。
ただこれねやっぱり赤系でもいろいろ色の寄りがあるんで難しいんですけど。でも他の人たちと被らない色。
これちょっと余談なんですけど無機系の顔料のときは、(例えば)「青と緑を混ぜるとグリーンになる」と感覚的に思ったものが実際そうなったんですけど、今は有機系が増えたんで。
有機ってやっぱり粒がちっちゃいんで相手をすごい染め付けるんで、なかなか振り幅が大きくなっちゃって(混色が)結構難しいんですよね。
ちょっと入れただけでバーって染まっちゃって……。
だから逆に言うと、混色のパターンは増えたってのはあるかもしれないと思います。
(ホネの混色塗りを見て)めっちゃ綺麗ですね!シュミンケみたいだって言われたら怒られるかな(笑)
次はですね、これは混色なんですが、あんまり聞かないんですけどフタロブルーイエローシェードとイミダゾロンイエロー。
深みのあるグリーンができると思います。
顔料の大きさをイメージで言うと、無機と有機って大体ですけど、ボーリングとピンポン玉ぐらい違うんです。表面積が違うと染付が変わってくるので……。
水彩はいいんですけど油で有機顔料の場合、やっぱ乾きも遅くなりますよね。
次がキナクリドンマゼンタとフタログルーイエローシェード。
強い者同士混ぜてしまったらどうなるのか。
ホネ山「青紫、やっぱりフタロの方がちょっと強い。でもマゼンタが足りなかったかもしれないです。」
今日はちょっと絵の具がなかったんですけど、セルリアンブルーとコバルトブルーとかの組み合わせも結構いいんですよね
粒子の大きさが違うと粒子感が出るんで本当は青系(同士)とかでも面白いかな?と思いますね。
最後ですけど、キナクリドンスカーレット。
初心者の方はピンクを作るときにすぐ白を入れられると思うんですけど、この色は薄めるだけでちょっとピンクっぽくなるよっていう。
ふんわり出せるんです。白を強くしないでフワッとしたピンクができる。
あとさっきのフタロブルーイエローシェードは実は全然売れないんですけど、濁りにくいんですよ。
キナクリドンスカーレットも売り上げはあんまりないんですけど、本当は使ってほしい!
PV15の水彩絵の具があったように思うのですが……。
(回答:ホルベヒコさん)
PV15っていうのは、ちょっと僕たちの現役の記憶になくて……。
PV15はなぜなくなってしまったのかちょっとこれ、油があるけど水彩はなかったのかもしれない。
今62歳の方にも聞いたんですけど、62歳の人が「知らない……」と。
ホネ山注:何名かの方から聞きましたが、昔のミネラルバイオレットがPV15だったそうです!
さびさんが現物をお持ちででしたので、掲載ご協力いただきました!ありがとうございました。
ホルベインはどのようにして今の透明水彩市場のシェアを切り開いていったのでしょうか?
(回答:ホルベヒコさん)
これはですね、マーケティングみたいな上等な話じゃなくて。
元々ホルベインの透明水彩ってのはですね1946年、終戦の翌年に出来て。
そして2011年グッドデザイン賞と。
今まで博報堂とかいろんなところで広告出してますけど、唯一透明水彩はほとんど広告出していないんです。
これがなぜかと言いますと、いろんな作家さんに、「HWCってのはもうトヨタのカローラみたいなもんだから」って言われて、意図的にしなかった。
あえてもうそういうものをしなくて、逆に「お客様がどこに行っても絶対に入手できる」っていうことをまず第一に、お店に扱ってもらうことが最優先でしたので、もうこれは営業が頑張ったという話ですね。
ホネ山「そうですねホルベインの水彩絵の具ってどこ行っても買えるっていうようなところが特徴だと思うのですが、営業の方が頑張ったということですね!」
ホルベインの水彩は実はマイナーチェンジを実は何回もしてるんで。
とにかく水彩ですから絵が丸裸になるんで、色が変わらないっていう努力はず~っとしてたんです。
それはあんま(レビューとして)出てこないんですけど、そういうのも(長年愛される原因として)あったのかな?というふうには会社としては思っております。
でも結果的には営業部の先輩達のおかげで、こんなに全国各地で買えます!って言うことです。
宮崎駿さんが(ホルベインの絵具に言及している件について)も、勿論あるんですけど。
ジブリ美術館で弊社の水彩絵の具を販売してもらってるんですけど、そこの冊子に宮崎さんが「ホルベインの水彩絵具ってこんなにいいよ!」みたいなことを書いてくださったのです。
それは物凄くありがたいんですけど、ありがたいんですけど!実は一方でグサッときたのがありまして(笑)
「ホルベインのパレットを持ってけば間に合う。一つ不満に思うのは、日本の自然に合った色がない。」
こと。
「ヨーロッパに行ったときに感じたのはホルベインの絵具がその風景に調和している。日本の小学生の茶色は、赤松の茶色なんです。今あの茶色は僕らの身の回りにないんです。未だに茶色っていうとあの色が入ってるけどやめるべきです。もっと自分たちの知ってる地面の色とかを入れるべきなんです」
これは、実は僕も前から思ってて、はいちょっと何かで実現したかったんですけど。
絵具って企業化したのはヨーロッパが先なんですけど、元々油絵具とかはアジア発だってのがもう最近分かってきていて。
昔からいろんな絵具があるんですけどやっぱり僕らはカメラと同じで後発なので、追いつけ追い越せでやってきたんですけど。
やっぱり自分たちのオリジナルのものっていうか、その土地に合ったものを作っていくべきだなって。
例えば海外に進出したときに、その国々でみんながすごくシンボリックな色とか誇りに思ってるものは、何か特別色として出したいなとかは思っています。
たくさん作家さんごとの透明水彩セットが出ているけど、なぜ基本12色の変更はないでしょうか?
(回答:ホルベヒコさん)
これはですね。実は基本の12色セットは、元々かなり古い話なんで、なぜかというのはよくわからないんですが。
混色の幅を考えたときに、おそらく今の12色セットっていうすごい狭いと思う。
実はですね、水彩画の技法書はほとんどホルベインなので……簡単に変えれないんですよ。
その先生方がせっかくホルベインを使って描いた本なのに、僕らが変えちゃうと、あれ??って。いまだにいっぱい(本が)あるので。
ホネ山「確かにそうですね!何十年も前の本を図書館で借りたことが」
もう一つは学校で採用されてるので。学校の授業のプログラムもそれで大体決まってるんですよね。
変えてしまうと現場は混乱するんで、なかなか難しい。
ホネ山「だから作家ごとのモデルを出して、ということですね。現場の立場からするとこっちの方が絶対使いやすいと思って。きっと何かの理由があるはずだって思っていて。多分製造しやすいのがあるのかな~?とか思ったんですけど。」
実はですねですね、昔からこれは変えるかどうかって話があるんですけど。
具体的にどの先生だけじゃなくて、本屋さんに行って本を見るとほとんど(ホルベイン準拠)なんで、そうですね「まず12色セット買いましょう」から始まって。
(回答:つしまさん)
マーケティングの話と被るんですが、先ほど営業も頑張ったっていうこともあるんですけど、我々の先輩方は出版社さんも重要視していたんです。
人気のある先生や、最近勢いのある先生とコンタクトし、ある程度我々の商品をご理解いただいて、「先生本出さないですか?」と企画書を持ってくんですね。材料全部提供します。と。
それで、我々の商材もそこに載るわけです。「推薦」ということで。
ホネ山「もう企画からホルベインで作って、持ってかれるのですね!」
そういう仕事をマーケティングの人間がずっとやってきたんですよね。私も若い頃は若干そこをやってたんですけれども、やっぱり段々そういった書籍の時代からネットの時代になってきたので、またここに来て、ちょっと雰囲気が変わってきましたね。
ちょっとまたフェーズが変わってきてっていうような。
ホネ山「我々みたいなものが出てきたりとか(笑)」
はい。そういうこともあるかもしれないですね。
分離色開発ってどうなりました?
(回答:ホルベヒコさん)
分離色については今年出すんですが、どこまでやっていいのかみたいなのが。
ちょっとこれはですね、会社というよりは僕の個人的な考えかもしれませんが。
ホネ山「オフレコにしますか?」
大丈夫ですよ。
例えば油絵の具っていうのは多少でもやっぱり画材に興味があるというか。
描くことだけでなく画材そのものも好きじゃないと、なかなか深く掘り下げていけないのかなって。
プリミティブっていうか、あんまり(構成が)ごちゃごちゃしない方がいいなっていうのはあるんですよ。むしろシンプルにして。
水彩の方はやっぱりファインアート以外の方でも、たくさんの方々が使っていらっしゃるので、そこはちょっと油絵具とは違う発想でなきゃいけないなっていうのがありまして。
ちょっと今ここでは申し上げられないんですけどあの分離色以外にホルベインの透明水彩は結構今、大きなことを進めてまして。普通ちょっとずつリリースするところを、一気にバーンとやってというところではございます。
ホネ山「ドドンと何かが来るかもしれない?!ってことなんですね!楽しみです!!」
ホルベインの透明水彩の場合はですね、ちょっと特異というか。
例えばこれ僕の勝手な考えですけど、シュミンケさんはクラシックなことをやってるみたいな感じで。
ニュートンさんはチャレンジャー、とにかく早く新しい顔料を採用して、軌道修正していくっていうイメージなんですけど。
みなさんに共通することは、やっぱりヨーロッパの水彩紙ってドーサの強いものが多いんで必ず(絵具に)界面活性剤が入ってるんですよ。
石鹸水みたいなものですけどそれがないとなかなか絵具がのびにくいと。
で、ホルベインの水彩ってなかなかのびないと。それはあれが入ってないんですよね。ほとんど入れてないんです。
何で入れてないかっていうと、一つは、お客様がどんな紙を使うかわからないので、最初からガンガンのびるのは作らないってのが合って、のばしたかったら「自分でオックスゴールを使ってください!」と。
もう一つはですね、界面活性剤を入れると濁ってくるんですよ。
バキッとした色が出ないので。
この「バキっとした色」、なんか下品だなって思うのか、鮮やかだなって思うのかは、人それぞれでちょっとわからないんですけど……。
そういう意味合いも込めて、界面活性剤はほとんど使用してないんです。やっぱここは(他メーカーと)違うところだと思います。
ホルベインのパンカラーって凄いのにあまり宣伝されていないですよね??
(回答:ホルベヒコさん)
パンカラー、はいこれはもう国際基準というか、他のいろんなグローバルブランドさんと同じように作っているんですけど、ご指摘の通り、広報とか周知が弱いですね。
(↑こんな豪華なセットがあるの知らなかった…!!)
これはなぜかというと、一つ(理由があって)ですね。
固形カラー(ケーキカラー)とパンカラーって違っていて、弊社の場合ケーキカラーは簡単に言うと、顔料と糊を混ぜてプレスしたら終わり。パンカラーは、チューブと同じくちゃんと練るんですけど。
日本って気温の温暖さが激しくて、パンカラー作るには最悪な気候なんですよね
ホネ山「(笑)」
それで機械を一から全部カスタマイズして作ったんですよ。
2代?1代前の技術部長が、もう水彩が大好きで作ったんですけど、機械から全部カスタマイズして、簡単に言うと、アツアツの絵具を機械に入れて、冷たくして出さないとといけない。
その時に絵具の方はめちゃくちゃ研究したんですけど、(包む用の)紙がうかつだったんです!
で、この紙が湿気を吸うか吸わないとかあって、紙を変更したらどうだ?っていうのがあったんですよ。
それで1回引っ込めて出したりとかっていうのがあって、(初回投入の段階で)バタバタってなっちゃって。
要は最初にちょっとつまずいちゃったんだけど、絵の具自体は凄いと。
あれはポンジュースみたいなもんで、絵の具をすっごく凝縮してるんで素晴らしいんですが、ちょっと最初にその資材面でミスったんですよ。
これ実際はですね、海外の方がめちゃくちゃ売れるんですよね。海外は(資材が)全部完璧になってから発売したんですよ。
もう紙も全て改善されてたんで、アジアやアメリカにはかなり入っているんですけど
やっぱ日本はね、最初にお店の投入段階で結構つまずいたので。
「使っていただけばわかるんですけどね??」っていうとこでございますね。
(つしまさん)
最初の箱もかなり和風で。
(ホルベヒコさん)
ちょっと海外を意識したしね。
(つしまさん)
日本メイドインジャパンの理想を出したということです。
(その2に続く 作成中)